上新井くろかわクリニック 黒河圭介

上新井くろかわクリニック院長 黒河圭介のブログ

テレパシー

わしの母は、昭和7年生まれで御年満88歳となる。 さすがにいっぱいガタが来てて、先日心臓弁膜症でTAVIという最先端の手術を受けた。 近所には母のかかりつけのクリニックがある。 ちょっと前に帰省した折、母と一緒にその先生にご挨拶に伺った。 そこのクリニックは、広大の循環器内科のご出身のご夫婦の先生のやっているクリニックでご夫妻ともわしよりちょっとだけ年上なのだ。(たぶん65歳くらい) とってもいい先生で母のことをたいへん親身になって診てくださる。

 

そこのクリニックにうかがった際、驚いたことがあった。 ご夫妻とも60代後半になろうかという先生なので、電子カルテとかPCとかは苦手だと思われるのであるが、そこのクリニックは電子カルテを導入されていた。

 

母の担当は、ご夫妻の家奥様の先生なのであるが、母の診察に当たって、ず~っと患者(母)の方を向ってお話をされるのだ。『黒河さん、お具合はいかがですか?』 『血圧を測りましょうね…』『心臓が苦しいことはないですか?』などとニコニコとしてお話しされる。母は勝手にいろんなことをしゃべり、腰が痛いとか、朝の目覚めが悪いとか勝手なことをぬかす。


先生は、カルテへの記入は一切されないでニコニコとして母の話を聞いている。

 

どうするんじゃろか? と黙ってみていたら、診察の脇でいかにも仕事のできそうなクラーク(?)さんがパチパチと電子カルテに母と先生との会話を入力しているのである。そんで、必要な薬の処方、血圧の入力などをしている。

 

先生は一切カルテを見ないで、母の顔ばかりを見ている。 なんと素晴らしい診察なのだ。とその時感銘を受けた。同じ開業医として、このような診察がしたいと思ったのである。

 

その時以来、わしはわしの分身となって働いてくれるクラークを育てることに決めたのだ。 

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これが理想とする診察スタイル。わしは、カルテへの直接記入はしない。テレパシーでクラークにカルテ記載内容を伝える。クラークが記入。わしは患者さんの話だけを聞く。

 

今日はそのクラークたちとの懇親会であった。 診察医とクラークとは心の糸で結ばれているのだ。 わしと彼女たちとはテレパシーで会話をしている。 わしが診察した内容を一言漏らさずカルテに記入して、わしが心の中で思っている処方、検査、画像、注射を間違いなくカルテに記入してくれる。 

 

わしは、常に患者さんの顔を見て患者さんの話を聞いて、彼女たちが書いたカルテを確認し、うなずくだけ。 これが理想なのだ。

 

正直言ってまだまだ理想には遠いが、今日はうちのクラークたちとの食事会であった。 こうしてクラークたちと心と心を通い合わせ、わしの診察の理想像に一歩一歩近づいておる。

 

今日は新しく入ったクラークの歓迎会であったが、日ごとに彼女たちとテレパシーが通じるようになっているのを感じる。

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コロナの影響で遠くまでは行けないので近場での懇親会